【社説】大阪万博閉幕 開催の意義伝えられたか

大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開かれていた大阪・関西万博が閉幕しました。

テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」は来場者の心に響いたでしょうか。「多様でありながら、ひとつ」というメッセージを国際社会に届けられたかどうか、開催の成否はこれから問われることになります。

国内では20年ぶりの大規模国際博覧会であり、158カ国・地域や多くの国内企業が参加しました。184日の会期中、大きな事故がなかったのは何よりの成果です。

盛り上がりを欠いていた開幕前の空気は、嘘のように変わり、会場は多くの人でにぎわいました。特に終盤には来場者が20万人を超える日が続き、チケットがあっても入場予約が取れない問題が生じるほど盛況を見せました。

日本国際博覧会協会によると、一般来場者数は2,558万人で、2005年の愛知万博(2,205万人)を上回りました。前売りが不振だった入場券の販売も最終的には2,207万枚まで伸び、公式ライセンス商品の売り上げも好調でした。これにより、運営費収支は230億~280億円の黒字が見込まれています。

赤字にならなかったことは幸いですが、黒字だからといって万博が成功したと判断するのは短絡的でしょう。

大阪・関西万博には多額の税金が投入されました。最大2,350億円にも及ぶ会場建設費は国、大阪府・市、民間が均等に負担しました。これに加えて、日本政府館の整備費や会場警備費などの政府支出は約1,000億円にのぼり、周辺のインフラ整備費用も含めればさらに膨らみます。

そもそも万博は収益目的の事業ではなく、集客数を競うイベントでもありません。単に楽しいだけでは不十分です。

政府は昨年3月の国会で、万博の開催意義について次のように説明していました。

「『未来社会の実験場』と位置付け、特に将来を担う子どもたちが未来社会を実感し、どういう未来をつくっていくべきかを考える機会を提供したい」

当初の目玉とされた「空飛ぶクルマ」の商用運航が実現せず、デモフライトにとどまったのは残念でした。しかし、それでも最新技術を目の当たりにした子どもたちは強い印象を受けたに違いありません。

万博期間中、ウクライナや中東のパレスチナでは紛争により多くの命が失われ続けました。ウクライナ館には「NOT FOR SALE(売り物ではない)」の看板が掲げられ、ロシアの軍事侵攻に屈しない人々の姿が伝えられました。

また、海外パビリオンで多様な文化に触れ、スタッフと交流するといった万博ならではの体験をした人も多かったようです。

近年、日本は経済力の低下もあり内向き傾向にあるとも評されますが、来場者の視野を世界に広げられたなら、それも万博の成果の一つと捉えられるでしょう。

シンボルの大屋根リングの一部は保存される予定ですが、1970年大阪万博の「太陽の塔」と比べると存在感では及びません。

それでも、来場した子どもたちが大阪・関西万博のレガシー(遺産)を心の中で大きく育んでくれることを願いたいものです。
https://www.nishinippon.co.jp/item/1411833/

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